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「厚生年金基金脱退」を認める判決と加入事業者への影響

◆厚生年金基金「やむを得ぬ理由の脱退認める」
長野県建設業厚生年金基金の加入事業所が、財政状況の悪化を理由に基金からの脱退を求めていた訴訟で、8月24日、長野地裁は「やむを得ない理由」があるとして脱退を認める判決を言い渡しました。

◆訴訟の経緯
原告である昌栄土建興業は、2011年1月、加入する長野県建設業厚生年金基金に対し、財政悪化や使途不明金の発覚などを理由に脱退を申請。ところが、同基金の代議員会は脱退を認めなかったため、同年6月に控訴しました。
基金側は、「加入している基金の脱退が相次ぐと存続できなくなる」として、脱退には代議員会の議決が必要だと主張しましたが、同基金では2010年に23億円の使途不明金が発覚しており、また、当時の事務局長の指名手配などの特殊な事情が「脱退を認めるやむを得ない理由」として、脱退を認める判決が下されました。
同基金は9月4日に東京高裁へ控訴、厚生労働省にも控訴審への参加を求めており、今後の行方が注目されます。

◆全国576基金のうち約半数は代行割れ
厚生年金基金は運用の低迷が続いており、2011年度末では全国576基金のうち、約半数の286基金が代行部分に損失を抱える「代行割れ」状態となっています。
加入している厚生年金基金から脱退するには、自社の積立不足分を一括納付することが条件ですが、体力のある企業だけが抜け、逆に経営の苦しい企業のみが取り残されることとなれば、今後、ますます厳しい状況となると考えられます。
現状の制度では、「弱者だけが基金に残る構図」と言わざるを得ません。

◆脱退を希望している他の基金に影響も
ある年金コンサルティング会社では、今年2月に発覚した「AIJ投資顧問」による年金消失問題を機に、脱退に関する相談が例年の倍以上になったとのことです。
今回の判決では、使途不明金などの特殊な事情があるとはいえ、基金に加入している事業者に影響を与える可能性は十分にあります。
仮に今後、脱退が増えると仮定すると、脱退企業からの多額な資金が入ることにより、一時的には基金の財政は良くなるかもしれませんが、中期的にみれば本質的な解決にはならず、さらに厳しい状況になるでしょう。

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